Updated: 2010/02/11

連載(7)北海道ブームの「仕掛け人」/中国映画「狙った恋の落とし方。」宇崎逸聡プロデューサー

By 北海道日刊スポーツ新聞社

連載(7)北海道ブームの「仕掛け人」/中国映画「狙った恋の落とし方。」宇崎逸聡プロデューサー


 中国では今、空前の北海道ブームが巻き起こっている。その「仕掛け人」が上海出身で日本国籍を取得した宇崎逸聡さん(50)だ。20日から公開される映画「狙った恋の落とし方。」の日本側エグゼクティブプロデューサーで、今回は初めて俳優にも挑戦した。08年公開の同作品は、中国史上最大のヒットを記録した大人のラブコメディー。作品の後半は、宇崎さんが「本当に素晴らしい景色と感じました」と評する釧路、阿寒湖、網走などが舞台となる。その美しく切り取られた映像の影響から、観光客が激増している。

 06年、友人らと道東を車で回った。感動した。友人でもあり中国でヒットメーカーの馮小剛監督が07年に来日。「北海道に行きたい」と言う同監督に「知床なら知っているよ」と案内した。その風景を見た同監督は、北海道を舞台にした映画製作を決意。製作のプロデューサーとして宇崎さんも参加した。「映画はヒットすると思っていました。その後、こんなに北海道ブームになるのは予想していませんでしたけど」と笑う。

 これまでは平たんな道のりではなかった。「チャレンジすればチャンスはある。神様は平等です。そのチャンスをつかめるように努力することだと私は思います」。映画が好きだった。夕張を舞台にした映画「幸せの黄色いハンカチ」は10回以上、鑑賞した。上海では調剤の仕事をし、生活は安定していたが、夢は捨てられなかった。88年に来日し、皿洗いなど働き続けた。90年に東京現像所に入社した。仕事は体力的にも厳しかったが辞めなかった。「実績も基本もないうちに何を言ってもダメ。認められるまで仕事をすること」とひたすら働いた。

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連載(7)北海道ブームの「仕掛け人」/中国映画「狙った恋の落とし方。」宇崎逸聡プロデューサー

日中友好の懸け橋と願う

 日本人女性と結婚し、子だからにも恵まれた。今回の映画の成功に、麻生太郎前首相から「日本に与えてくれた経済効果は計り知れない」と直接、感謝の言葉ももらった。それでも宇崎さんは挑戦を続ける。「映像、ドラマ、特に映画は1つの国を左右するほど影響力がある。仲良くしたほうが温かい気持ちになれるじゃないですか。もっとお互いの国が良い方向になるようにまた、映画をつくりたい」。中国と日本の架け橋になるために、常に前向きだ。【上野耕太郎】

 ◆宇崎逸聡(うざき・いっそう)本名・〓逸聡。1959年6月6日、上海出身。88年に日本に留学、90年より東京現像所に勤務し映画界に入った。現在、サン・バイ・サンワークス代表取締役。中国や台湾の映画配給権利の買い付けや宣伝にもかかわる。日本国籍も取得。家族は日本人の妻と長女と長男。08年には観光庁より「第4次YOKOSO!JAPAN」大使に任命された。千葉県在住。
※〓は鳥にこざとへん

 ◆映画「狙った恋の落とし方。」 中国を代表する監督、馮小剛の08年公開作品。中国原題は「非誠勿擾」。中国では「レッドクリフ」を抜き、興行収益史上最高を記録し、DVDを含めると約1億人が観たともいわれる。結婚相手を募集するサイトで知り合った中年男性秦奮(葛優)と、客室乗務員の梁笑笑(舒淇)のラブコメディー。映画の中盤から舞台は北海道になり、釧路、阿寒湖、網走、厚岸、斜里、美幌といった土地の美しい映像が話題を呼び、北海道観光が中国でブームになった。日本ではニトリパブリックが配給権を取得。20日から全国に先駆け北海道で公開される。

●公式サイト http://nerakoi.com/
●予告編 http://nerakoi.com/movie.html

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連載(7)北海道ブームの「仕掛け人」/中国映画「狙った恋の落とし方。」宇崎逸聡プロデューサー

映画「狙った恋の落とし方。」のワンシーン。©配給:(株)ニトリパブリック、サン・バイ・サンワークス(有)配給協力:富士(株)

 ◆宇崎さんの北海道特選
 ▽場所 この間、トマムに行ったんですけど良かったですね。あと十勝。あそこは食べ物もおいしいし、いいですよね。 
 ▽食べ物 網走で食べたキンキ。焼きもいいですけど、しゃぶしゃぶがおいしかった。


 ◆取材後記 

 「中国で反日感情の高まり」といった報道を目にすることがある。サッカーの国際試合では日本代表がブーイングを受けるシーンも印象深い。
 
 ただ、それは一部でしかない。
 
 それほどの嫌悪感が全体に蔓延しているのであれば、これほどの中国人観光客が北海道に来るとは思えないのだ。宇崎さんは言う。「日中国交正常化から日本の映画が中国に入ってきました。私達の世代は『幸せの黄色いハンカチ』など日本の映画を見ました。そして憧れました」。その日本映画文化を目の当たりにした「第一世代」の馮小剛監督や宇崎さんが「狙った恋の落とし方。」を作り、新たな世代を日本に、そして北海道に導いてくれた。

 先日、映画を鑑賞した。派手なアクションも強引な笑いへの誘導もない。クスッと笑わせるロードムービーは、上品な仕上がりだ。宇崎さんはこうも言う。

 「映画には『婚活』する人、株にはまっている人、同性愛者、お墓のセールスなど色々な話が出てきます。そして、この話題は今の中国の社会現象でもあるのです」。

 20数年前、日本語がまったくできない28歳は異国に飛び込んだ。その行動力に感服する。口には出さないが1つ1つの言葉が心にしみた。人柄もあるのだろうが、苦労人の優しさと含蓄に溢れていた。

 「2つの国がどうなるほうがいいですか。今度の日本での公開で中国の姿を知って欲しい。そして今の中国のブームが冷めないうちにもう1本、映画を作りたいのです」。
 
 宇崎さんは「より良い両国の関係」を願った。1人の願いは小さい。ただし、その願いは強く、ぶれなかった。その輪が広がり、中国全土を巻き込んだ。

 宇崎さんは映画の後半、知床旅情を歌いながらすすり泣くシーンを演じた。「家族や友人と離れ日本に住む中国人は別れや寂しさを抱えている」。この映画は文化であり、思想であり、日本に住む中国人の魂の結晶なのだ。今度は日本人がその思いをしっかりと受け止める番だ。【ノーススタイル事務局・上野耕太郎】

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