Updated: 2010/04/01

連載(14)幻の道産米を追え/渋谷農場・渋谷敏さん

By 北海道日刊スポーツ新聞社

連載(14)幻の道産米を追え/渋谷農場・渋谷敏さん

<「渋谷農場」を経営する渋谷敏さん(左)と優佳さん>
 幻の米に魅せられた男がいる。06年3月に岩見沢市と合併した北村で「渋谷農場」を経営する渋谷敏さん(42)だ。

 90年代に「冷めてもおいしい」「粘りがあり甘い」とされる低アミロース米が登場し、「ミルキークイーン」(東北地方南部)などブランド米が人気となった。その先駆けとなったのが道産米の「彩(あや)」だ。91年にデビュー。しかし、栽培が難しく収穫量も不安定とされた。
 現在、同品種の作付面積は道内で40fに満たないという。渋谷さんは、その中で13・6fで栽培している。「それほどリスクがある品種とは思いません。私はこの彩という米がおいしいと信じている」。北海道出身の有名フレンチシェフのテレビ番組で「幻の米」と紹介されるなど、その味への評価は高い。

[+] 画像拡大

連載(14)幻の道産米を追え/渋谷農場・渋谷敏さん

彩をつかった渋谷農場の「大願成就米」

 「そこまでやるかと言われてしまいますけど」と苦笑いするほど、品質にこだわる。自宅前には7000万円をかけて倉庫を建設した。床面積は140坪。収穫した米を一定温度に保って保管、精米や貯蔵庫も完備した。ネズミ防止のため入り口のシャッターは二重化。1カ月の冷房費は8万円になった。「(保管が悪いと)米の呼吸が止まってしまいますので。おいしいものを届けたいと思うと、あれもやりたいこれもやりたいと。それでも自分でスーパーや消費者の方々に卸すなら、このくらいの設備投資は必要」と信念がある。関西の高級スーパーなどに卸すが、道内では知名度がなく、流通量も少ない。それも幻の米と呼ばれる理由の1つだ。

 大規模な農業に一番必要なことはと尋ねると、意外な言葉が返ってきた。「農業技術、経営感覚も必要ですが…。どれだけ機械を使いこなすかではないでしょうか」。中学時代から家の手伝いで農業機械に触れてきた。妻の優佳さん(42)はこう話す。「(耕運機などの)運転は驚くほどうまい。『音を聞け』と怒られるんですけど、エンジンなどが不調になる前にちょっとした音の違いで気がつくんですよね」。機械が壊れれば修理に1週間はかかる。壊れる前なら修理は1日、故障個所が分かれば半日で終わる。収穫の大切な時期を逃さない、コストをかけないという積み重ねが農業には大切なのだという。

 器具の手入れ、経理、営業もする。「好きじゃないとホント、できない仕事です」。幻の米は「農業の職人」のこだわりと心意気で支えられている。【上野耕太郎】

 ◆渋谷敏(しぶたに・さとし)1967年(昭42)5月18日、北村(現岩見沢市)生まれ。美唄工高から酪農大に進学し、卒業後は3代続いた農業の道へ。北海道屈指の大規模な水田経営のため、見学者は後を絶たない。今年からは地名にちなんだ「大願成就米」も販売している。家族は妻と1男。

back to top

northstyle Hokkaido  Sports and Life style

©2019 ノーススタイル northstyle -Hokkaido Sports and Life style- by KJ PRODUCTION Co.,Ltd. All rights reserved.

Powered by

KJ PRODUCTION

日刊スポーツ