Updated: 2010/05/04

連載(19)北海道の靴をつくる/ハンドメード靴「cagra」樋口泰三さん

By 北海道日刊スポーツ新聞社

連載(19)北海道の靴をつくる/ハンドメード靴「cagra」樋口泰三さん


  穏やかな笑顔が印象的な靴職人が札幌にいる。07年7月にハンドメード靴の専門店「cagra(カグラ)」を開業した樋口泰三さん(38)だ。昔ながらのハンドソーン・ウェルテッドという伝統的な製法で1足ずつ作り上げる。200以上の行程を1人で積み重ねていく。「お客様が最終的にいいなと思うもの、喜んでいただけるものができればいいですね」。技術だけではない。注文靴の出来は職人のコミュニケーション能力の高さに左右される。

 サッカー少年は高校を卒業後、スポーツ用品のメーカーに勤務した。バブルがはじけ、会社ではリストラが始まった。終身雇用、年功序列という秩序が目の前で崩れていく。何がやりたいのか、自分を見つめ直した。その答えは「職人」だった。28歳で会社を辞めた。当初は家具、かばん作りなどを目指したが、イタリア旅行で靴作りの面白さに衝撃を受けた。少しずつ、目標が見えてきた。

 30歳を前に札幌から上京した。日本の注文靴作りの第一人者で「ギルド オブ クラフツ」の創設者としても著名な山口千尋氏のスクールに入った。新聞販売店で働きながら、教室に通う。スクールでの3年間に加え、2年目からはスタッフとして働いた。04年には靴の本場、英国で半年間、修行した。「技術レベルでは日本も高いし、几帳面。ただ、(英国靴は)歴史からなのか靴がオーラを持っている」と本場の貴重な経験も口にした。

 学んだものを地元に持ち帰りたかった。05年に札幌に戻り、店舗探しや靴のサンプルの制作に1年以上を費やした。注文靴を扱う店舗は北海道にほとんどない。採寸し、木型を作り、フィッティングする行程を経るため、東京で注文する場合にも交通費がかかってしまう。靴好きや足の形から既製品が合わないユーザーにとって、待望の店舗となった。「東京で修行した人は地元に帰って還元してもいいのではないかと、自分は思います」。

 オーソドックスなストレートチップなどの商品に加え、最近はエゾシカの革を素材にした靴にも取り組んでいる。教室も開き後進の指導もしている。「北海道の独自の靴や文化を作りたいですね」。最後まで、静かで優しい表情だった。【上野耕太郎】

 ◆樋口泰三(ひぐち・やすぞう)1971年(昭46)11月4日、札幌市生まれ。小学時代から札幌西陵高までサッカー部に在籍。高校卒業後、スポーツ用品メーカーに就職したが職人を目指し東京へ。日本の注文靴作りの第一人者、山口千尋氏へ師事。05年に札幌に戻り、07年7月に「cagra(カグラ)」を立ち上げた。独身。

 ◆cagra(カグラ) ハンドメードシューズですべて樋口さんが手がける。木型を作る場合は18万5000円から、木型なしでは13万3000円から。14世紀から欧州に伝わる「ヒストリカルシューズ」は2万5000円から。カグラの名前は「靴蔵」を由来としている。工房で教室も開催している。住所は札幌市中央区北3東5の5岩佐ビル3階。問い合わせは 電話 011・219・0928。

 ◆樋口さんの北海道特選
 ▽場所 モエレ沼公園が好きですね。あと、札幌大通公園のビアガーデン。あれほどの規模のビアガーデンってないですよね。
 ▽職人 札幌のかばん職人の日下公司(くさか・こうし)さん。同じ革を扱う職人の先輩としてお手本です。つくるものもすごいけれど、お店のトータルな見せ方、考え方も素晴らしい。日下さんの工房はどこから写真を撮っても絵になりますよ。

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