Updated: 2010/07/13

連載(29)地元の味「いいんじゃない」/「ル・プルコア・パ」久保田豪之シェフ

By 北海道日刊スポーツ新聞社

連載(29)地元の味「いいんじゃない」/「ル・プルコア・パ」久保田豪之シェフ


 北海道を「題材」に腕をふるうフレンチのシェフがいる。99年11月、札幌市東区に「ル・プルコア・パ」をオープンさせた久保田豪之シェフ(38)だ。気さくな人柄とカジュアルな店内の雰囲気。肩を張らずに本格派のフランス料理を堪能できる。今では週末の予約が取りにくい人気店だ。「オープン当初は開店休業状態でした」と苦笑いする。

 「自分の城」を持ちたかった。札幌東陵高時代からの夢は「25歳までに店を持つこと」。高校卒業後、料理の専門学校へ進学した。ためた80万円を手に、22歳でフランスに渡った。中南部のオーベルニュ地方のレストランで働き始めた。ミシュランの格付けは1つ星だったが、想像以上に厳しい現実が待っていた。

 言葉が分からない。聞き取れずに間違った作業をすると、鍋が飛んできた。「調理場で怒鳴られる夢ばかり見た。ストレスで髪の毛がごっそりと抜けて、排水溝で束になっていた」。対人恐怖症になりかけた。

 3カ月が過ぎ、言葉が聞き取れるようになると、軌道に乗りだした。1度帰国し、98年に再び渡仏。3つ星レストランの「マークヴェラ」「ジョルジュブラン」で腕を磨いた。「やはり3つ星は厨房(ちゅうぼう)の空気が張り詰めていた。チームでの作業になるけれども、レベルが違った」。経験を積み夢に遅れること2年、27歳で開業した。

 フランスから選び抜いた食材を輸入し、本場の味を再現したが、客足は伸びない。迷いが生じ始めた。足元を見直した。北海道の食材のポテンシャルの高さに驚かされた。「石田綿羊牧場の子羊、生田農園のホワイトアスパラとの出会い。北海道ならではのフレンチをつくりたくなった」。07年に狩猟の免許を取得。カモやエゾシカなどを捕るため、シーズンになると、週3回は早朝、狩猟に出る。「きちんと処理した肉は臭みがなく、最高の食材になる。それまで食材の種類が少なくなる冬は弱点だった。猟が盛んになる冬の狩猟が弱点を補ってくれた」。食材として捕獲された野生の鳥獣、フレンチ用語でいう「ジビエ」が看板メニューに加えられた。

 3年前から札幌ベルエポック製菓調理専門学校で週2回、講師を務める。若い料理人のたまごからエネルギーをもらっている。オープン当時からの常連客から「料理が変わった」と評されることも。「店を持つことを目標にしてきたからでしょうか、料理の確立に人一倍、時間がかかりました」。店名は仏語で「いいんじゃない」という意味。「名前の通り、ようやくいろいろなことに格好つけなくなったかもしれません」。

 皿に彩られた格調高い料理のなかに、シェフの穏やかな人間性と格闘の歴史が包み込まれている。【上野耕太郎】

 ◆ル・プルコア・パ 札幌市東区北19東16にあるフランス料理店。99年11月11日にオープン。ランチタイムは午前11時30分から午後2時、ディナーは午後6時から同9時まで。座席は34席(いす30席、カウンター4席)。定休日は毎週月曜日と年末年始。予約、問い合わせは 電話 011・785・5455へ。

 ◆久保田豪之(くぼた・ひでゆき)1972年(昭47)6月20日、札幌市出身。高校まで続けた剣道は初段の腕前。大阪辻学園調理技術専門学校を卒業し、94年に渡仏。「ル・ラディオ」「ルオン・ド・リヨン」「オーボン・コアン・ドゥ・ラック」などの店で修行。96年に一時帰国後、98年に再度渡仏。3つ星レストランで修行し、札幌で実家のあった場所を改装し、オープンした。家族は妻と長男、長女。

 久保田シェフの北海道特選
 ▽食べ物 「手打ちうどん寺屋」(札幌市西区)は本場のさぬきうどんでおいしいですよ。あと、お店で使わせていただいている「ブーランジェリー アンシャンテ」(札幌市南区澄川)のパンは最高です。美瑛の「百姓屋」の有機野菜も個性が強いですね。

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