Updated: 2010/07/20

連載(30)北海道とアフリカの音色が融合/縄文太鼓奏者・茂呂剛伸さん

By 北海道日刊スポーツ新聞社

連載(30)北海道とアフリカの音色が融合/縄文太鼓奏者・茂呂剛伸さん


 独自の芸術を創造し、発信する若き演奏家がいる。西アフリカの伝統楽器ジャンベ太鼓奏者の茂呂剛伸さん(32)だ。「北海道で誇れるもの、発信するものがないか」と思い続けてきた08年、札幌大の名誉教授で詩人の原子修氏に出会う。「縄文芸術を世界に発信するつどい」の会長を務める同氏から縄文土器を使った楽器のヒントを与えられた。

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茂呂さん創案の縄文太鼓

 ジャンベはアフリカ特有の硬質な木と、ヤギの革でできている。ジャンベをベースに地元江別のJR高砂駅周辺で出土した縄文土器の複製にエゾシカの革を張った独自の太鼓を創案。「縄文太鼓」と名付けた。「ジャンベ太鼓は『カーン』と抜けるような音がする。縄文太鼓は重厚な音ですね」と茂呂さんは話す。07年には東京の新国立劇場でパリオペラ座のバレエ団と競演するほどの打楽器奏者としての腕前を存分に発揮できる「メード イン 北海道」の楽器が完成した。

 衝撃的な出会いが人生を変えた。中華料理のシェフを目指し、料理の専門学校に通っていた19歳の2月。路上でジャンベ太鼓を演奏している人と出会った。「弟子にしてください」。自宅にあった和太鼓を取りに帰り、並んで演奏を始めた。アフリカのガーナに行くことを決意したが、ガーナ大使館では紹介者がいなければビザが取れないという。北海道に来た著名な演奏家に頼み込んだ。熱意に打たれた演奏家から出身の集落「ガ族」で出迎えることを伝えられた。

 20歳でガーナに向かった。朝に太鼓をたたき、熱い昼間は昼寝、夜は再び宴席でたたく。水に当たり腹痛に苦しんだが「3カ月したら下痢が止まり、蚊にも刺されなくなった。人間って不思議ですね」と話す。行動力はそれにとどまらない。1カ月で日本に戻り、交際中の夏世さんと結婚。そのまま新妻を現地に連れ帰った。50人の部族で1年暮らしアフリカの音とリズムを体にしみこませた。

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西アフリカの伝統楽器「ジャンベ」

 現在はジャンベ、縄文太鼓の演奏者、そして不動産会社の取締役としての2つ顔を持つ。プロ演奏家として活躍していた20代前半、妻はこう言った。「社会が求める音楽は社会性がないと生まれない」。父親が営んでいた不動産業を手伝い始め、ビジネスの喜びも味わうようになった。「喜んでいただくことが対価」という考えも生まれた。子どもたちへ縄文太鼓の教室、心療内科の音楽治療にも協力する。

 北海道で舞台産業を発展させることが夢だ。22日には自らが事務局長となり「詩劇 縄文―未来からの声―」(札幌・教育文化会館)という舞台を開催する。「縄文をテーマに北海道を掘り起こしたい。古いものを取り上げるというのではなく、縄文時代の豊かだった心を取り戻したい」。茂呂さんのたたく縄文太鼓は優しく、豊かな音色がした。【上野耕太郎】

 ◆詩劇「縄文―未来からの声―」 22日、札幌市教育文化会館大ホール(中央区北1西13)で開催。開場は午後6時30分、開演は同7時。「1万年の間、戦争のなかった縄文時代を未来にむかってよみがえらせましょう」とテーマにバレエ、音楽、衣装で縄文時代を舞台芸術化する。入場券は前売り4000円、当日券は4500円。問い合わせは同事務局 電話 090・2874・7541

 ◆茂呂剛伸(もろ・ごうしん)本名・茂呂剛伸(もろ・たけのぶ)1978年(昭53)5月5日、江別市生まれ。大麻小2年から鼓章流どさんこ太鼓に入門。とわの森三愛高ではバレーボール部に所属。北海道調理師専門学校に進学した19歳のとき、ジャンベ太鼓と出会う。20歳でガーナに1年間滞在し本場の音を吸収。09年から縄文太鼓の創作と演奏会をスタートさせた。家族は妻と2男。

 茂呂さんの北海道特選
 ▽場所 北海道神宮が好きですね。なぜだか落ち着くし、気持ちがキリッとします。あと、お茶ともちが食べられるんですよね。僕の子どもは北海道神宮で名前を付けていただいたんですが、5000円でした。もっと高いものかと思いましたが。
 ▽コミュニティー 北海道でいうならコミュニティーの規模がすごくいいなと思います。経済系の人、スポーツ関連の人、芸術系の人、オタクの人…。いろいろなジャンルの人と出会うことができて、仲良くなれる規模が僕は気に入っています。



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